自ら引退を願い出ていたにもかかわらず,2005年選挙でローマ教皇に選出され,しかし異例の生前退位により人々の前から姿を消した「ベネディクトゥス一六世」こと前教皇ラッツィンガー.ナチスの席巻,学生運動,冷戦終焉など,大きく揺れ動いた時代のなかで,ヨーロッパの再生に向け全身を傾けて闘う姿を描いた初の評伝
●目次
まえがき――二十年後に読む「文明の衝突」論
主要略語一覧/凡例/地図
序 章 「キリスト教的ヨーロッパ」の再発見
第一節 政教不分離の国ドイツ
第二節 保守派ドイツ人の教皇選出
第一章 ヨーロッパ内のオリエント
第一節 ローマ=カトリック教会の形成
第二節 反近代主義への道
第三節 世界戦争と国家総動員の時代
第二章 ヒトラー・ドイツの神学校生 一九二七年―一九四五年
第一節 オーバーバイエルンでの出生
第二節 ゲオルク・ラッツィンガー神父
第三節 バイエルンと国民社会主義政権
第三章 公会議の神学顧問 一九四五年―一九六六年
第一節 一九四五年ドイツ――「修正」か「破壊」か
第二節 「神学の神童」――司祭叙品と神学研究
第三節 教皇ヨアンネス二三世と第二ヴァティカン公会議
第四節 公会議神学者としての分析
第四章 時流に抗する大学教授 一九六六年―一九七七年
第一節 一九六〇年代ドイツ――「破壊」による「修正」の否定
第二節 テュービンゲン大学正教授への就任
第三節 一九六八年――戦後ドイツの転換点
第四節 「時代の専制」への懐疑
第五章 祖国バイエルンの司牧者 一九七七年―一九八二年
第一節 ミュンヒェン=フライジング大司教への就任
第二節 ミュンヒェン時代の意見表明
第三節 バイエルンとの別離
第六章 ヴァティカンの甲冑枢機卿 一九八二年―二〇〇五年
第一節 教理省長官への就任
第二節 『信仰の状況について』――ヴィットーリオ・メッソーリとの対話
第三節 一九九〇年――冷戦終焉と「グローバル化」の進展
第四節 『地の塩』『神と世界』――ペーター・ゼーヴァルトとの対話
第五節 「キリスト教的ヨーロッパ」の為の二正面作戦
第七章 聖ペテロの後継者 二〇〇五年―二〇一三年
第一節 「ハベームス・パーパム」
第二節 「ロゴスの聖座」と「聞き過ぎない教皇庁」
第三節 信仰と理性
第四節 性道徳
第五節 位階制と典礼
第六節 「文明の衝突」への対応
第七節 「バイエルン人」と「ドイツ人」との間
第八節 名誉教皇
終 章 聖座のノンコンフォーミスト
注
あとがき――ニコライ堂からアルトエッティングへ
年譜/史料・文献一覧/索引
著者:今野 元
判型:A5版 上製
ページ数:504ページ
ISBN:978-4-13-021081-2
発行:東京大学出版会
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