晩年の永井博士が限りない愛情を込めて綴った長崎風物語。すべての人に読んでほしい話題作。
原子野も年を重ねるほどに、春の野と呼んで好いまでに、野草の花が咲きそろいました。カヤノたちの仲間は、花に誘われて、丘をゆき、田をゆき、日暮れにはハトより送れて家に帰ってまいります。カヤノは両手で大事そうに胸にふくらんだエプロンを抱いています。エプロンをぱっとひろげると、中から一つのくれないの球がころがり出して、私の掛布団の上に砕けました。レンゲソウの花でした。
著者: 永井 隆
判型: 文庫判
ページ: 203
ISBN: 4-88216-032-3
発行: 聖母の騎士社