ビザンティン後期に多くの論争を経て,東方キリスト教霊性の精華であるヘシュカスム(祈りの方法やその意味など)の霊性運動を理論的に大成したグレゴリオス・パラマス(1296頃-1359年)の主著『聖なるヘシュカストたちのための弁護』の全訳である。彼は若い時にアトス山で修行し,晩年テサロニケの大主教を務め,没後に列聖された。
ビザンティン宮廷に重用されたバルラアムは「アトス山の修道士たちが祈りの中で神を見る」ことを聞き,祈りを励む者たちを異端の廉で告訴した。これに対しパラマスが正面から批判し修道士たちを弁護,論争はビザンティン宮廷を巻き込み,聖俗あわせた争いに発展した。最終的にはパラマスの論がビザンティン教会の正統とされ,バルラアムは排斥されてイタリアに帰りローマ教会の司教になった。
西方教会とは違い,観想など実践を重んずる東方教会の独自性が本書により解明される。教父たちがキリスト教の地盤でギリシアの知的業績を考察し直した躍動的な思想は,キリスト教の精神伝統の生の姿を髣髴とさせてくれる。
わが国の西欧中心の見方に対し,欧州の辺境の地で営まれた知的,霊的精進の宝庫に新たな可能性が見出されよう。
(知泉書館HPより)
●主な目次
第 I 部
第1論攷
第1問
〔序文〕
第1回答
1 言葉では何も証明できない
2 真の知恵は世俗のそれではない
3 罪の力
4 異郷の教育とキリスト教的生活
5 愚かにされた知恵
6 世俗の学問研究の善用と悪用について
7 真の教育
8 聖バシレイオスの後悔
9 ギリシアの知恵と神の恵み
10 哲学者の「汝自身を知れ」 他
第2論攷
第2問
〔序文〕
第2回答
1 身体はそれ自体としては悪ではない
2 土の器の中の宝物
3 知性は心の中に住まう
4 知性を自ら自身へ再度送ること
5 知性の循環運動 他
第3論攷
〔序文〕
第3回答
1 嘘偽りは真実に近づく
2 告発者らの欺瞞
3 覚知と霊的な光
4 否定を超える見神
5 霊的照明
6 聖人と聖書による証言 他
第 II 部
第1論攷
1 バルラアムと修道士
2 バルラアムの著作
3 本書第II部の由来
4 バルラアムの出発点
5 真理の二つの側面
6 異郷の学問のもつ問題
7 聖霊の知恵
8 真の哲学者 他
第2論攷
祈りについて
1 祈りに対立する肉の知恵
2 ニケフォロス,ヘシュカスムの師
3 バルラアムとヘシュカスムの伝統
4 感覚と祈り
5 すべての感覚が捨てられるわけではない
6 身体的苦痛は祈りに導く
7 身体的感覚は祈りに結びつく
8 神との一致 他
第3論攷
聖なる光について
1 盲人が盲人を導く
2 一連の盲人たち
3 バルラアムは教父たちに反対している
4 あまねく知られた一神教
5 感覚を超えた神 他
第 III 部
第1論攷
1 傲慢さ
2 真理を守る義務
3 バルラアムの考えは「フィリオクエ」に至る
4 バルラアムのイタリアでの使命
5 バルラアムは正教徒か
6 バルラアムは恵みを拒否する
7 『ブラケルノス』の場合
8 霊の恵み
9 「ヒュポスタシスのうちにある」とはどういうことか
10 キリストの神としての栄光 他
第2論攷
1 偉大なマカリオスの教え
2 再びマカリオス
3 メッサリア主義という中傷
4 異端の真の源泉
5 本質と本質の特質
6 神の業について
7 非創造のエネルゲイアと神の諸々の名
8 エネルゲイアは始めと終わりをもつ
9 教父による証言 他
第3論攷
1 本当の異端
2 預言者たちに対する冒瀆
3 彼は経験もなく話している
4 彼はニュッサのグレゴリオスを他の教父たちに対立させる
5 神と人間
6 本質と区別されるエネルゲイア
7 二つの本性と二つの働き
8 神化された人間は本性上の神ではない
9 身体の眼は神の栄光を見る 他
著者:G.パラマス
訳者:大森正樹
判型:新書判 並製
ページ数:576ページ
ISBN:978-4-86285-275-5
発行:知泉書館
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