利己主義による分断が進み、他者の苦しみを顧みない現代世界の闇を具体的に検証し、「よいサマリア人」のたとえを糸口にして、愛がもつ寛容性と普遍性について説き、弱者を切り捨てることのない開かれた世界を生み出すための道筋を希望をもって提言する。イスラームの指導者との対話から刺激を受け執筆された、兄弟愛と社会的友愛に関する社会回勅。
グランド・イマーム、アフマド・アル・タイーブ師と教皇が共同で署名した文書「世界平和と共生のための人類の兄弟愛」を巻末に付録として収める。

●目次
フラテッリ・トゥッティ
境界なく

第一章　閉ざされた世界の闇
粉々に砕かれる夢
　歴史意識の末路
万人のための計画の欠如
　世界規模での切り捨て
　十分な普遍性を帯びずにいる人権
　争いと恐れ
共通の方向性を欠いたグローバル化と進歩
パンデミックと他の歴史上の惨劇
国境での人間の尊厳の欠如
コミュニケーションの錯誤
　恥知らずな攻撃性
　知恵をもたない情報
服従と自己軽視
希望

第二章　道端の異邦人
背景
見捨てられた人
繰り返される物語
登場人物
再起
垣根なき隣人
寄留者からの問いかけ

第三章　開かれた世界を描き、生み出す
超え出る
　愛の固有の価値
愛のますますの寛容さ
　すべての人から成る開かれた社会
　普遍的な愛の不十分な理解
会員社会を超えて
　自由、平等、兄弟愛
人々を鼓舞する普遍の愛
倫理的善の促進
　連帯の価値
所有権の社会的機能の再提案
　権利に国境はない
　民の権利

第四章　全世界に開かれた心
国境の限界
互いに与え合う
　実りある交流
　無償で受け入れる
ローカルとユニバーサル
　ローカルの味
　グローバルな視野
　自分の地域から

第五章　最良の政治
ポピュリズムと自由主義
　民衆派か大衆迎合か
　自由主義の立場の価値と限界
国際機構
社会に向かう愛と、政治において実践する愛
　必要とされる政治
　政治において実践する愛
　実現する愛
政治的において実践する愛の働き
　愛の献身
　余すことなく呼び集める愛
成功よりも豊かな土壌を

第六章　対話と社会的友愛
新しい文化に向けた社会での対話
　ともに築く
合意形成という基盤
　合意と真実
新しい文化
　文化を形成する出会い
　他者を認識する喜び
優しさを取り戻す

第七章　再び会う道
真実からの再出発
平和の構築と手仕事
　まず、いちばんの弱者とともに
ゆるしの価値と意味
　避けられない対立
　正当な対立とゆるし
　真の克服
記憶
　ゆるす――だが忘れない
戦争と死刑
　戦争の不正義
　死刑

第八章　世界の兄弟愛のために働く宗教
究極の根拠
　キリスト教のアイデンティティ
宗教と暴力
呼びかけ
創造主への祈り
キリスト教一致の祈り

注
付録　共同文書　世界平和と共生のための人類の兄弟愛
あとがき


原タイトル：FRATELLI TUTTI
著者：教皇フランシスコ
判型：四六判　上製
ページ：272頁
ISBN：978-4-87750-231-7
発行：カトリック中央協議会


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