大学での対面授業の自粛、ミサへの出席の禁止、人びとの外出や活動の制限など、コロナ禍による未曾有の大きな混乱の中で、歴史学者であり、カトリック司祭である著者の透徹した洞察と思索は、はるか時空を超えて「万華鏡」のごとく輝きを放つ。本書は、気鋭のキリシタン研究者、川村信三神父(イエズス会)による初のエッセー集である。
「三十年後、百年後、まだ図書館というものが存在しているなら、書棚に残った本書を偶然手に取ってくれる人がいるかも知れない。そのとき、あの『激動の時期』、当事者は何を考え、何を希望して生きていたのかを知るささやかな資料としてくれるならば、著者にとって望外の喜びである。」(著者・はじめにより)
●目次
はじめに
1 今 よみがえる殉教者の姿
2 秘跡の記憶(メモリア)
3 高山右近の辞世
4 『沈黙』についての違和感
5 井上筑後守「転び」の陥穽(おとしあな)
6 能動的信徒覚醒のための緒(いとぐち)
7 宗教(派)間対話の根底にある「エキュメニズム」の真理
8 浦上の「秘密教会」と「旅」のはじまり
9 「彼らは何を信じていたのか」という問いへの疑問
10 聖母月に想う
11 「無慈悲の知」――最新脳科学が説き明かす人間性と歴史の教訓
12 キリスト教の歴史的功罪を問う人びとの声
13 真の「英雄」とは?
――映画『ハクソー・リッジ』と『沈黙―サイレンス―』との奇遇な一致
14 家族の絆と信仰
15 大友宗麟の器の大きさ
16 伝統を紡ぐ
17 最先端の科学技術者に「歴史」と「宗教」を語ることの意味
18 ベアト(福者)・ジュリアンの旅
19 科学者はいかにキリストと教会を信じるのか
20 和紙に魅せられた異国人
21 「地方教会」の歴史と日本宣教(その1)
22 「地方教会」の歴史と日本宣教(その2)
23 まぼろしの「中国典礼」――伝統社会の崇敬は「宗教」か「文化」か
24 戦時下の上智大学と靖国神社の「敬礼」
――中国典礼問題と日本カトリック信徒との意外な関係
25 「語り」による「福音」伝達の妙
26 火星人への洗礼?
27 「信仰」が導く日韓「共通歴史認識」
28 教皇フランシスコ 最も静かで意義深い再会、そして惜別
29 ローマ教皇としての絆の証し ――四百年前の「奉答書」が語るもの
30 「オアンデミック」――恐怖とパニックではなく警鐘としての機能
31 そして風はやみ、凪となった
32 自粛とは「祈り」に違いない
33 「目に見える教会」の力
34 ザビエルの直感 ――日本人はすでに「神」を知っていたか
35 ザビエルはなぜ中国宣教を目指したのか
36 シルクロードで天国を見つけた男の話
37 「どん底」に見いだすもの
38 「境界」を接すること
39 『ラ・チビルタ・カットリカ』誌のこと
40 明治初期の奄美・沖縄宣教の歴史から学ぶ
41 アフター・コロナを見据えて
42 新たな倫理的課題 ――この問題に教皇はどう向き合うのか
43 闇にこそ歌声を
44 祈りの記憶は調べと共に
45 来日した「改宗者」、アルメイダのこと
46 今、オスカル・ロメロ大司教を思う
47 西洋文化の「受容」に重ねて
48 秘跡にこもりて
49 「修道士」アルメイダの回心
50 長崎、四百五十年後の再生
51 慈悲の証し
52 「一人の魂を救う者は」
53 ヴィア・ドロローサ〜主の受難の道〜
54 「ウラジミールの聖母」のイコンの前で
55 最初の日本人司祭、木村セバスチャンのこと
あとがき
著者:川村信三
判型:B6版 並製
ページ数:316ページ
ISBN:978-4-8056-3924-5
発行:サンパウロ
<著者略歴>
川村信三(かわむらしんぞう)
イエズス会司祭。上智大学文学部史学科教授。上智大学キリシタン文庫長。キリシタン文化研究会会長。日本カトリック司教協議会列聖推進委員会顧問。1958年生まれ。1983年、イエズス会入会。1992年、司祭叙階。1999年、米国ジョージタウン大学より歴史学の博士号(Ph.D.)取得。著書に『キリシタン信徒組織の誕生と変容』(教文館)、『戦国宗教社会=思想史――キリシタン事例からの考察』(知泉書館)、『二十一紀キリスト教読本』(教友社)、『時のしるしを読み解いて―現代キリスト者の課題』(ドン・ボスコ社)、『キリシタン大名高山右近とその時代』(教文館)、共著に『超領域交流史の試み』(SUP上智大学出版)、『キリスト教と寛容―中近世の日本とヨーロッパ』(慶応義塾大学出版会)、『ヨーロッパ中近世の兄弟会』(東京大学出版会)など多数。近年、東京大学の研究グループとの共同作業による、キリシタン時代の手書きの書簡などの古文書を最新の科学技術を用いて多方面から調査・研究に従事。さらに、「日本・バチカンプロジェクト」(角川文化復興財団主催)の研究部門を統括。
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